【前編】婿養子って何?婿養子のお見合いと結婚について

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みなさん、こんにちは。
この記事では「婿養子」について前編と後編に分けて説明したいと思います。

前編では、経営学からみた婿養子
後編では、結婚からみた婿養子

について書いて行きます。

さて近年、ハーバードビジネススクールを始めとした、
海外の最新経営学では同族経営に注目が集まっています。

中でも特に注目されているのが「婿養子」です。
明治以前は「入婿」と呼ばれていましたが、以降は民放の制定でこのように呼ばれるようになりました。

何故今、海外でこの「Mukoyoshi」が注目されているのでしょうか。
それは、これが西洋には無い画期的な発想で、最新の経営学の面から見ても、実に効率的かつ理にかなっているからです。

では何故彼らにとって画期的なのかというと、その昔キリスト教文化を背景とする西洋諸国では、神以外の者が親子関係に入るのはよくないとされていたからです。
このため、ファミリービジネスを存続させる為に外部から他人を養子にするという考えは日本のように発展しませんでした。近年ではハリウッドスターや一部の実業家が「ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)」として養子をとる人が増えた事もあり、
養子をとることが一般的になってきた為にビジネスとしても注目を集めている点が挙げられます。

一方で日本では、同族経営といえば御家騒動やネガティブな印象があるかもしれません。
しかし、安倍首相のお祖父様である岸信介や、トヨタ自動車の初代社長、サントリーの新社長新浪剛史氏など各界で活躍されている方にも婿養子が多く存在します。
また、日本は京都を始めとして世界で最も老舗が多い国として知られています。
近年ではバイオリニストの葉加瀬太郎さんや所ジョージさんも婿養子です。

日経ビジネスではこのように評価されています。
引用:日経ビジネスオンライン

星野リゾートの星野佳路社長が日経ビジネスで「ファミリービジネスは宝の山である」と主張しているように、最近はその意義を再評価する動きがあります。
実は、世界の経営学とファイナンス分野の研究では、統計分析を使った実証研究の成果から、星野社長と同じような主張がされています。すなわち、同族企業は業績が悪くないどころか、実はむしろ非同族企業よりも「業績が高く」、しかも「社会に貢献する」可能性も主張されているのです。

日本の同族企業について最も包括的なデータ分析をされている1人は、京都産業大学の沈政郁(シム・ジョンウッ)准教授です。沈准教授らが2013年に「ジャーナル・オブ・フィナンシャル・エコノミクス」に発表した論文では、2000年時点で日本の上場企業1367社のうち、約三割が同族企業であることが示されています。

同族企業は業績も悪くない

さらに重要なのは、「同族企業の業績は、非同族企業よりも優れている」という研究結果が多く出ていることです。
たとえば先のアンダーソンの論文では、米S&P500の403社のデータを使った統計分析を行い、同族企業の方が非同族よりもROA(資産利益率)が高いことを示しています。沈准教授の日本企業の研究でも、やはり(1)同族企業の方がROAや成長率などが高く、(2)中でも婿養子などの方法で「外部から同族メンバーを加えた企業」で業績がよい傾向が明らかになっています。

カナダ・サイモンフレーザー大学のエリック・ゲダジュロヴィッチらが米国の同族企業について過去に発表された55本の実証研究をまとめあげた「メタ・アナリシス分析」でも、やはり「同族の方が非同族より業績がよい」という結果になっています(メタ・アナリシスについてはこの連載の2013年12月配信回を参照)。

なぜ、同族企業は業績が高くなるのでしょうか。経営学では、おおまかに3つの理論的な説明がされています。

理由1 同族企業では通常、創業者一族が一定の株式を保有しているわけですが、これはすなわち「経営にもの申せる大株主がいる」ことにもなります。例えば、雇われ経営者が功名心に駆られて過剰投資などに走りそうになっても、この「もの言う大株主」がその行為を抑制できる可能性があります。
理由2 同族企業は非同族にはないリソースを持っていて、それが業績に貢献する場合があります。例えば代々受け継がれている評判、長い付き合いのお客、血脈や長い付き合いの人脈などがそれに当たります。
理由3 同族企業の創業者一族は、会社と一族を重ねた視点を持ちがちです。この視点を持つと、目先の経済的な利益だけではない投資を行うようになり、それがプラスに働く場合があります。

また、「日本で特に業績がいい企業の経営形態は、同族企業で婿(ムコ)養子が経営をするパターンである」という事が報告されています。
ではなぜ、婿養子が経営する会社は業績が良いのでしょうか?

それについてはこちらの記事でとても詳しくまとめられています。

同族経営のマスオさんが最強

日経ビジネス:MBAでは学べない最新の経営学。

なぜ同族企業の業績はよくなるのか

説明(1) まず、創業家が大口株主であることのメリットです。これは主にプリンシパル・エージェント理論(Principal-agent theory)という考えから来るものです。
この理論は、「経営者は、企業の所有者である株主に代行して、経営をしている」と考えます。

しかし「株主の利害」と「経営者の利害」が一致するとは限りません。例えば、経営者は利益よりも企業規模を大きくすることに興味があったり、あるいは自身の名声を高めるために、株主が望まない過剰投資やリスクの高い企業買収に走ったりすることがあり得ます(エージェンシー問題といいます)。しかし、同族企業には創業家という大口株主がいますので、彼等が「ものいう株主」となって経営者の暴走を抑えることができる、という主張です。

説明(2) 創業家の心理・感情的な側面に注目する説明もあります。経営学では、社会情緒資産理論(Socio-emotional wealth theory)として知られています。例えば同族企業では、創業家出身の経営者は「企業と一族を一体として見なす」ことが多くあります。このような企業は目先の利益ではなく、企業(=家族)の長期的な繁栄を目指すので、結果としてブレのないビジョン・戦略をとりやすい、という主張です。さらに、創業家の人脈や名声、その企業だけに重要な経営ノウハウなど、「創業家でないと持ち得ない経営資産」も貢献するかもしれません。

実際、近年メディアを騒がせるような、大胆でブレのない戦略をとっている企業には、同族企業が目立ちます。例えばアイリスオーヤマは、社長の大山健太郎氏以下、経営陣のほとんどが同族で固められています。

ロート製薬は、1999年に創業家出身の山田邦雄氏が社長に就任以来、「肌ラボ」など化粧品分野への進出の成功で飛躍しています。サントリーの米ビーム社買収という大胆な一手も、社長が同族出身の佐治信忠氏だからこそ可能だったのかもしれません。

同族企業のトレードオフ

説明(3) では逆に、同族企業のマイナス面は何でしょうか。それはやはり、「資質に劣る経営者が創業家から選ばれてしまうリスク」になります。同族にこだわらなければ社内外の優秀な人材に経営を任せられるのに、その可能性を放棄しているわけです。この場合、先ほどの「ものいう株主」は逆効果になり得ます。すなわち、(資質に劣る)経営者と大口株主が共に同族であれば、その株主は身内の経営者に甘くなりがちだからです。

次に、メロトラ・沈氏達は1961年から2000年までの長期に渡る日本の上場企業の所有形態を精査しました。その結果、例えば2000年時点の日本の上場企業1367社のうち、約3割が同族企業であることが示されています。

そして所有・経営形態と業績の関係を統計分析すると、ムコ養子が経営者をしている同族企業は、(1)血のつながった創業家一族出身者が経営をする企業よりも、ROA(総資産利益率)が0.56%ポイント高くなり、(2)創業家でも婿養子でもない外部者が経営をする企業よりも、ROAが0.90%ポイント、成長率が0.50%ポイント高くなる、という結果を得たのです。

ムコ養子同族企業の業績がいいのは理論的に当然

なぜ「ムコ養子同族企業」は業績が良くなるのでしょうか。このメロトラ・沈達の研究はデータ分析に注力していますので、理論的な説明にはそれほど紙幅を割いていません。したがってここからはあくまで私の解釈ですが、先の経営学の理論的な説明をみれば、その答えは明らかではないでしょうか。すなわち、先ほど説明した「同族企業のトレードオフ」をムコ養子はきれいに解消してくれるのです。

繰り返しですが、同族企業は「もの言う株主」がいたり、ブレのない長期的な経営がしやすい、という意味ではプラス面も大きいのです。他方でその決定的な課題は、資質が弱い経営者を創業家から選んでしまうリスクでした。しかし、それがムコ養子なら話は別です。なぜなら通常、ムコ養子は長い時間をかけて外部・内部から選び抜かれた人がなる場合が多いからです。

他方で、その人は創業家に「ムコ」として入って創業家と一体になりますから、株主(=創業家)と同じ目線で、ブレのない経営ができるのです。つまり、先の3つの説明でいえば、ムコ養子は(1)と(2)のプラス面を維持したまま、(3)のマイナス面を解消できるのです。まさに「同族企業のいいとこ取り」です。

同族企業は「もの言う株主」がいたり、ブレのない長期的な経営がしやすかったり、という意味ではプラス面も大きいのですが、資質に劣る経営者を創業家から選んでしまうリスクがあるということです。
それが婿養子なら話は別とのこと。
なぜなら「通常、婿養子は長い時間をかけて外部・内部から選び抜かれた人がなる場合が多いから」らしいです。他方で、「その人は創業家に「婿」として入って創業家と一体になりますから、株主(=創業家)と同じ目線で、ブレのない経営ができる」とのことです。

このように、「婿養子」は経営学の面から見ても、世界的に評価されています。

次回、後編では結婚からみた婿養子についてお伝えします。

 

最後に、私は悪質な結婚を減らして、結婚で世を幸せにしたいと願っています。

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こちらは、BBCに出演した時の動画です。


BBC: Japanese businesses keep it in the family

ABOUTこの記事をかいた人

仲人 / 結婚プロデューサー。 "婿養子婚"・"DNA婚活"を提唱。 結婚を通じて良い社会を作りたい。 ”失敗しない結婚作り”を目指します! ■出演メディア BBC(英国放送) / ロイター通信 / Arte (アルテ) / France24 / NHK WORLD